55. 「脱北、逃避行 (野口孝行 著)」 を読んで


成功。挫折。 そして投獄。
NGO日本人青年の脱北者支援活動と中国獄中243日
北朝鮮難民支援活動に従事し、現在も北朝鮮から国際手配される
著者が体験した脱北支援活動の緊迫した情勢と、中国当局の
人権軽視の実態を克明に伝えるノンフィクション。
(中経出版 HP より)


「地上の楽園」 は 「とんでもないこの世の地獄」 だった…

読み初めからこの作品に強く引き込まれながらも、忙しくて一気に読む時間が無く、早く先を

進めたいと思うことばかり頭から離れなかった数日間でしたが、ようやく身辺も少し落ち着き、

遂に読み終わりました。読み始めから興奮気味で、ここにも先日その様子を書きました

結局、最後までテンションが落ちることはありませんでした。

この本を手に取ったのは、映画「クロッシング」を観て疑問に思ったことが幾つかあり、

その答えの一部が見つかるような気がしたことと、北朝鮮難民を救援するとは具体的に

どのようなことなのか知りたかったからです。

読み終わった今、期待通り疑問は解決され、期待以上の内容だったと満足しています。

「クロッシング」での疑問とは、脱北ビジネスのブローカーと純然たるボランティアの

区別がつかない場面があったことで、その辺りがよく理解出来ました。

そして救援の具体的方法が作品の全般を通して書かれており、人助けとは言え、これほど

の危険を冒してまで困難なことに立ち向かうのかと驚き、同時に敬意の念を抱きました。

また脱北者も、北朝鮮で生まれ育った人だけに限らず、日本で生まれた元在日韓国・朝鮮人

や元在日韓国・朝鮮人を配偶者に持つ日本人が、1958年から始まった北朝鮮帰国事業で

渡ったケースなども含められていること、著者が救った、あるいは救おうとした脱北者も、

そのように日本に関わりのある人達だとわかりました。

脱北者は圧制の祖国をようやく逃れても、逃れた中国も安全な場所ではなく、その危険地帯

から安全な場所へ逃がす手助けをする 「日本の小さなNGOの大きな使命感」 に、同じ国民

というだけで、誇らしく思えて頭が下がりました。


この本で特に印象深いのは、中国当局の人権軽視の実態を克明に知らされて 「憎き中国」 の

はずですが、著者が関わった中国人は必ずしも悪い人ばかりではなく、むしろ愛すべき大勢

の人々が登場することです。そのことが、結局人間同士のことは時間をかけても人間同士が

解決出来るものだと教えられているかのようで、絶望の中にも希望があり、遥か遠い先には

見え隠れする僅かな光が姿を現わしました。


最後に、私が大号泣した場面を紹介します。

脱北者の淑子さんは、私と同じ東京生まれで年齢もほぼ同じ、17才まで東京で高校生活を

謳歌していたそうです。彼女は無事脱北を成功させた暁の安住先に、生活支援対策などで

好条件が整っている韓国ではなく、条件の悪い日本を強く希望しました。

それは淑子さんにとって故郷は日本であり、望郷の想いは、どんな苦労も厭わないほど強い

ものだったからです。淑子さんが17歳で日本を発ち北朝鮮行きの船に乗った時、大流行

していた太田裕美の「木綿のハンカチーフ」の歌詞が紹介されている場面で、私はおもわず

その歌を口ずさみ、涙でぐちゃぐちゃになりながら最後まで歌い続けました。

17歳の自分がもし、淑子さんだったら…

北朝鮮という、国とも言えないような国に対する憤りは最高潮に達しました。


木綿のハンカチーフ 太田裕美
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木綿のハンカチーフ 太田裕美

つづく
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