46. ドライマティーニの法則

45. 命をかけた潜水 のつづきです。

「一般的なスクーバダイビングで潜って良いとされている深度は39メートルまでです」

と、インストラクターに教わったのは1981年、ダイビングを始めた時でした。

これは法律で定められていることではないので、もっと深く潜るアマチュアダイバーは

たくさんいますが、私がずっとこの39メートルを頑なに守って来たのには理由があります。


ダイビングを始めて間もない頃、同行者が水深30メートル地点で、いきなりレギュレター

(空気を吸う機材)を口から外して朦朧としている姿を目の当たりにしました。

その時はガイドさんが直ぐ異変に気づいて近づき、レギュレターをリカバリー(機材に

入った海水を外に出す)してから同行者の口にくわえさせ抱きかかえるようにゆっくり

浮上して事なきを得ました。浮上してから同行者に話を聞くと 「何が起きたか記憶にない」

と、きょとんとしており、ガイドさん曰く 「窒素酔い」 とのことでした。

タンクの空気は、約80%の窒素と約20%の酸素で構成されており、1気圧の陸上では

窒素分圧が0.8気圧ですが、水深10メートルでは2気圧となり、窒素分圧が1.6気圧、

40メートルでは5気圧となり、窒素分圧が4気圧… 濃い窒素を吸ってしまうことになり、

10メートル潜る度に、ドライマティーニを1杯飲んだ時と同じ状態になることから

この原理を 「ドライマティーニの法則」 だと教わりました。

30メートルで異変が起きた同行者は、ドライマティーニを3杯飲んだ計算になり、

歯医者さんが抜歯などの時に使う 「笑気麻酔」 は、この高圧窒素を利用したものです。


ではどうして、同じ水深にいた私も、ドライマティーニを3杯飲んでいた状態なのに

異変が起きなかったのか? それどころか1杯も飲んでいないような感覚だったのか?

よく、お酒を飲む時に、ある程度までは何杯飲んでもほとんど酔いを感じないのに、

一定量を越えるといきなり酔いが回って足がふらついたりすることがありませんか?

窒素とアルコールが同じ作用かどうかの根拠はありませんが 「ドライマティーニの法則」

を提唱した人は、個人差はあるものの非常に近い状態になることから、そう名づけた

のではないかと推測します。それで私も4杯までは何でもなくて、5杯目でいきなり

酩酊するような気がして仕方なく、その恐さから39メートルを、約30年間も必守

しているわけです。もちろん、もっとお酒に強い人は沢山おり、60メートル(約6杯)

くらいまで平気な人は結構多いと思います。でも、そのような人も、ひとたび体調が

優れなかったり薬を服用していたりすると、状況は一転して変わります。

よって自分が最悪の状態でお酒を飲んで(海に潜って)どの程度までなら大丈夫なのか

確認しておく必要があり、私の場合は4杯なので39メートル以上は潜らないのです。


40メートルを越えることは、UDTの屈強なダイバーであっても、私のようなリゾート

ダイバーであっても、人間である以上状況いかんでは危険ラインなのだと思います。

そんなことを私などに言われなくても十分わかっていたであろう、ハン・ジュホ准尉は、

年齢的にピークをとうに過ぎた体をおして、仲間(大半は息子ほど年の若い後輩でしょう)

を助けるために、冷たく濁って暗く荒れた海の水深45メートルで命を落しました。

原因は窒素酔い以外にも多く考えられます。高圧で分圧が増えるのは、窒素に限らず

酸素も同じなので酸素中毒の可能性もありますし、肺の破裂や減圧症による意識不明

など数えたらきりがありません。


夜の海&ドライマティーニ
「さこのバー」より


それにしても何で 「ドライマティーニ」 なのだろう…

はっきりした答えは調べてもみつかりませんが、カクテルの王様と言われ、人気が高く

こだわりの飲み方も千差万別、語られることが非常に多いお酒だとか…

ドライジン、ドライベルモット、レモンの皮、オリーブ、シェイカー 家に全部ありそうなので

今夜は 「ドライマティーニ」 を5杯飲んで、水深45メートルに私も行ってみようかな(涙)

合掌 (ハン・ジュホ准尉は仏教徒だったようなので)
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