337. 第15代 沈壽官氏 「過去の中から未来を学ぶ」 

9月19日(水)19:00~ 駐日韓国大使館 韓国文化院 ハンマダンホール にて開催された

韓国文化講演シリーズ「私の中の韓国」 第六弾 第15代 沈壽官(ちんじゅかん)氏 の

『四百年の時空』 に行ってきました。


物心ついた頃から司馬遼太郎の長編小説ファンだった私は単に短編だからと、なんとなく

読んでいなかった 「故郷忘じがたく候」 を10年程前に読んで大きな衝撃を受けました。

作品の主人公は第14代 沈壽官氏、講演された第15代 沈壽官氏のお父様にあたる方です。

これは韓流ファンになる以前の出来事ですが、それまでに読み漁った傑作と賞賛されていた

作品群が一気に色褪せ、「故郷忘じがたく候」が私の中で最高傑作に躍り出たのです。

413年前、秀吉の朝鮮の役で島津家に連行された全羅北道 南原の陶工たち、姓氏は

「伸、李、朴、卞、林、鄭、車、姜、陳、崔、盧、沈、金、白、丁、何、朱」 の17氏を数え、

苗代川 (日置市東市来町美山) が故郷に似ていることから集落を作り薩摩焼を起こしました。

初代 沈当吉氏はその中の1人で、その子孫の血統が現在まで続いている家は珍しいそうです。

ちなみに413年前とは2012年の現在を基準にした言い方なので、実際に小説として世に出た

1968年の時点では370年前となります。

そして私が 「故郷忘じがたく候」 に大きく心を動かされた理由は以下の2点です。

◎薩摩に連行されて来た朝鮮陶工たちの絶望的な苦悩が、なぜか私自身に
  憑依したかのように、息苦しい程の悲しみが襲ってきた。

◎1966年渡韓した第14代 沈壽官氏がソウル大学大講堂で講演した時の言葉に圧倒された。
 
 「これは申し上げていいかどうか」 と前置きしてから
 「私には韓国の学生諸君への希望がある。韓国にきてさまざまの若い人に会ったが、
 若い人のたれもが口をそろえて36年間の日本の圧制について語った。もっともであり
 そのとおりではあるが、それを言い過ぎることは若い韓国にとってどうであろう。
 言うことはよくても言いすぎるとなると、そのときの心情はすでに後ろむきである。
 あたらしい国家は前へ前へと進まなければならないというのに、この心情はどうであろう」
 「あなた方が36年をいうなら、私は370年をいわねばならない」



以上のような経緯から今回の韓国文化講演シリーズは私にとって格別な講演であるため

これまでにない気持ちの昂ぶりと緊張感を抑えながら参加しましたが、目の前に現れた

第15代 沈壽官氏の話し方はとても穏やかで、内容は非常にわかり易くユーモアもあり、

緊張していたことなど何処かに忘れ、気がつけばリラックスして引き込まれていました。

講演の詳細は 韓国文化院のHP にUPされていますので、その中では触れられていない

印象に残った点のみを簡単に紹介します。今年で53歳、39歳で15代目を継承した沈壽官氏、

「壽官」の名は幕末期に薩摩焼の振興に多大な貢献を果たした第12代 沈壽官氏 から続き

第12代目は坂本竜馬と同じ歳とのことです。初代 沈当吉氏が焼いた『伝火計手(ひばかりで)』

は朝鮮の陶工が朝鮮の土と釉薬(うわぐすり)を使って焼いた茶碗で、窯の火だけ日本製なので

この名が付き、15代 沈壽官氏 は、その逆をやってみたいと思い、日本の土と釉薬で作った

茶碗を韓国へ持って行き、窯の火だけ借りて作ったこともあるそうです。

413年前に朝鮮から薩摩に連行されてきたのは陶工ばかりでなく、楠から樟脳(しょうのう)を

抽出する技術・養蜂・土木測量技術・木綿の栽培などを伝えた技術者もおり、多岐に渡って

貢献した話は興味深かったです。そして終始、海を渡り辿り着いた見知らぬ土地で恐怖と不安

と悲しみに喘ぎながら、それでも「今日だけを生きよう」 と知恵を絞り逞しく生き抜いて

こられたご先祖への敬愛と感謝の念に溢れていました。15代目を継承するに当っては諸々

抵抗もあり悩んだ時期もあったようですが、心を整えて家の歴史と向き合うようになり、

「わかっているのは今だけだが、未来は過去にあるのではないか?」 と考えたそうです。

「1人の人間の1個人の人類として、自分がどうあるか思い描き、突き抜けていく…」

と語られ、1時間半の講演が終わると、いつになく大きな拍手が鳴りやみませんでした。

その中で私が 「故郷忘じがたく候」 を初めて読んだ時に襲われた 「息苦しい程の悲しみ」 は

ふわっと消えて高みに運ばれたような感覚に包まれました。


最後になりますが…

第14代 沈壽官氏が「あなた方が36年をいうなら、私は370年をいわねばならない」
とソウル大学の大講堂で話した時、満員の聴衆は「自分たちの本意に一致している」 という
合図を演壇上の沈氏におくるため歌声を沸きあがらせた。


その歌をお届けします。

노란샤쓰의 사나이  패티김 (黄色いシャツの男 パティ・キム) ← をクリックするとスタートします!

노란샤쓰의 사나이  패티김
黄色いシャツの男  パティ・キム

노란 샤쓰 입은 말없는 그 사람이
어쩐지 나는 좋아 어쩐지 맘에 들어
미남은 아니지만 씩씩한 생김생김
그이가 나는 좋아 어쩐지 맘에 쏠려

아아 야릇한 마음 처음 느껴 본 심정
아아 그이도 나를 좋아하고 계실까
関連記事
プロフィール
カテゴリ
管理人へのメールはこちら

初めての方は、送信される前に
カテゴリ「メールの返信について」を
ご一読くださいますようお願いします。


e-mail


メールは公開されません。

CalendArchive
CASIO-Calendar
QRコード
QR
template
・template サブカルシート HiRo
・background-image kaze-sora.com
・header-image JJGallery
リンク