286. 詩人尹東柱とともに・2012  

2月19日(日) 14:00~ 詩人尹東柱を記念する立教の会 主催、池袋 「立教大学チャペル」

にて開催された 「詩人尹東柱とともに・2012 (시인 윤동주와 함께)」 へ行って来ました。


第一部 追悼セレモニー 「追悼の祈り」 「詩の朗読(韓国語・日本語)」 「アリラン斉唱」

第二部 講演 「尹東柱の詩のこころ」 小倉紀蔵(おぐらきぞう) 京都大学准教授



第一部の追悼セレモニーでは、立教大学チャプレン キム・デウォン司祭の司式により

一同で聖歌を歌い、詩編を読み、祈りを捧げてから9編の詩の朗読が始まりました。

朗読者は韓国人と日本人のさまざまな立場の方々で、どの方の朗読からも尹東柱の詩を

純粋に愛する思いがストレートに伝わってきて心豊かな気持ちになりました。


20130805286.jpg
立教学院諸聖徒礼拝堂(池袋キャンパス チャペル)


中でも特に印象に残ったのは、劇団ピープルシアターの俳優であり 「CD尹東柱詩集」

日本語朗読を担当された二宮聡さんの 「雪降る地図」 でした。順伊 (スニ) は誰なのか? 

順伊 (スニ) は何なのか? 想像が尽きることなく広がってゆく美しい詩です。


「雪降る地図」  1941.3.12
順伊 (スニ) が去るという朝                
せつない心でぼたん雪が舞い、
悲しみのように 
窓の外はるか広がる地図の上をおおう。
部屋の中を見廻しても誰もいない。 
壁と天井が真っ白い。
部屋の中まで雪が降るのか、
ほんとうにおまえは失われた歴史のように飄然(ふらり)と去っていくのか、
別れるまえに言っておくことがあったと便りに書いても    
おまえの行先を知らず 
どの街、どの村、どの屋根の下、    
おまえはおれの心にだけ残っているのか、
おまえの小さな足跡に
雪がしきりと降り積もり後を追うすべもない。
雪が解けたら のこされた足跡ごとに花が咲くにちがいないから    
花のあわいに足跡を訊ねてゆけば    
一年十二ヶ月 おれの心には 
とめどなく雪が降りつづくだろう。   



二宮聡さんは2008年、劇団ピープルシアターの公演 「一点の恥辱なきことを」 で尹東柱役

を演じたことがきっかけとなり 「CD尹東柱詩集」 の日本語朗読を担当されたそうで、

尹東柱のイメージに良く合う素敵な方です。

第一部の最後は、尹東柱が同志社大学在学中、太平洋戦争の戦況悪化により故郷への

帰国を決めた時、同級生が開いた送別ピクニック(京都宇治川)で歌ったという 「アリラン」

(京畿アリラン) を全員で斉唱しました。 


死んでゆく人に 小倉紀蔵
講演の冊子 死んでゆく人に 小倉紀蔵


上記は第二部の講演前に配布された冊子です。

「講演が始まるまで、この冊子を開かないでください」とあり期待感が膨らむ粋な演出、

いよいよ休憩が終わり小倉紀蔵先生の講演 「尹東柱の詩のこころ」 が始まりました。

冊子を開くと尹東柱には無関係のこれから 「死んでゆく人」 に対する長いメッセージと

尹東柱の 「序詞」 が綴られており要約すると…


「生命」 は物質であり、〈いのち〉は生物をうごかしている「生命」とは異なる。

人間は生物的な 「生命」 をうしなったあとも、〈いのち〉が終ることはなく永遠であり、

〈いのち〉 は単独ではなく、多重主体性のある魂にほかならない。

そして尹東柱の詩は、〈いのち〉の結晶のような作品である。

「序詞」  1941.11.20
死ぬる日まで天をあふぎ
一点の恥づかしさもなきことを、
木の葉に起こる風にも
ぼくはこころわづらつた
星をうたふ心で
なべて死にゆくものを愛さなくては。
そしてぼくに与へられた道を
あゆまなくてはならぬ。

こよひも星が風にかすめ吹かれる。



小倉紀蔵先生の 「序詞」 の訳は、伊吹郷先生の訳と少し違い 「生きとし生けるもの」 を

「なべて死にゆくもの」 としていますが、私は 「生も死も同じもの」 と考えているので

どちらも大差なく素晴らしいと思います。

幅広い見識があり韓国哲学を究められた先生が考える真理と、私の拙い経験と感性で

受け止める真理が同じものであるのか? 答えを出す術もありませんが、大変貴重なお話を

伺い良い勉強をさせて頂きました。私は 「多重主体性」を、誰にでも各々魂の故郷があり

同郷の複数の魂が 「この世」 でそれぞれ違う経験をしては故郷に戻り、その経験を共有

するからそのような状態になる、そのこと自体を指していると理解しました。

あの時代でも上手に生き延びる術は探せばあったかもしれないのに敢えてそれをせず、

心と言動と行動を一致させて生きた結果が獄死だった尹東柱の潔さは 「魂の故郷」 の

影響が大きかったと思わずにはいられません。


最後になりますが、大変意義深い集いを主催された 「詩人尹東柱を記念する立教の会」

をはじめ、「立教大学チャプレン室」 「同志社コリア同好会」 「福岡・尹東柱の詩を読む会」

「尹東柱の故郷をたずねる会」 「NPO法人ハヌルハウス」 「法政大学 交換留学生」 他

大勢の皆様のご尽力に心からお礼申し上げます。

韓国語が上手に話せれば… 尹東柱文学大賞受賞者の詩人で韓国からお越しの

パク・ミンボク氏と直接お話がしてみたかった… それが1つだけの心残りです。
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