7. クロッシング~祈りの大地~ ③

貧しくも幸せな3人の生活は、ヨンスの妻が栄養失調から肺結核に罹ることで崩れていきました。

病院はあっても治す薬がなく、せめて栄養をつけさせたいとヨンスはジュンが可愛がっていた

犬まで犠牲にしますが、他になす術はなく遂に薬と食料を求めて中国へと渡る決心をします。



ここから先は、だんだん辛い内容になっていきますが、ヨンスを演じるチャ・インピョさんが、

兵役中に主演した映画 「アルバトロス」 のように、観るに耐えない程の残虐さはありません。

同じく兵役中のイ・ジョンジェさんが出演していたことから私は、わざわざ韓国から中古の

ビデオを購入して鑑賞しましたが、いくら北朝鮮の惨状を伝えようとしても、ここまで残虐だと

多くの人に観てもらえる可能性は限りなくゼロに近くなると思われ、「クロッシング」の手法は

つくづく素晴らしいと思いました。


サンチョルから聖書をもらうヨンフ
サンチョルから聖書をもらうヨンフ


ヨンフが中国国境の川、豆満江を渡る決心をする少し前に、貿易商の友人サンチョルから

聖書をもらうシーンがあります。サンチョルは北朝鮮政府公認の貿易商でしたが、密かに

禁止されている宗教を布教するために聖書を大量に持ち込み、自分の家に隠していました。

マルクスは「宗教は民衆の阿片である」と、レーニンは「宗教は毒酒である」と、金日成は

「宗教は反動的で非科学的な世界観である」と定義し、北朝鮮に宗教の自由はありません。

私自身は特定の宗教を信仰していませんが、宗教を弾圧して指導者が都合の良いイデオロギー

を民衆に押し付け洗脳させる行為は人の道を大きく逸脱しており、いかなる宗教を信じることも

人間である以上自由だと当然にして思います。この作品ではクリスチャンである監督の思いが

主人公ヨンフのセリフなどにも込められているようですが、私としては何の抵抗もなく受け入れ

られる内容でした。そもそも、あらゆる宗教の創始者の考えは全て正しかったのに、後の人々の

解釈が少しずつずれて宗派が枝分かれしたり、宗派間の争いが起こったりする悲劇が生じている

との考えを私は持っています。この作品で登場するキリスト教の思想は、正しい創始者の考えと

同じだと思いましたし、悲惨な状況に甘んじながら、それでも生きていかなければならない人々

にとって死後にも世界があることは大きな希望と言えるでしょう。

そのような希望すら奪い取られて、悲惨な生活を余儀なくされている北朝鮮の人々を1日も早く

自由の身にしてあげたいと、非力ながらも切実に思いました。

中国へ渡る父を見送る息子
中国へ渡る父を見送る息子


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6. クロッシング~祈りの大地~ ②

脱北者がテーマの映画と聞けば楽しい内容のはずはなく、そうでなくても何かとストレスが

たまりやすい昨今「せめて映画くらいは明るく楽しいものを観てスカッとしたい」と敬遠されて

しまう懸念を少し感じましたので、実際どのような作品なのか、あまりネタバレにならない程度

に私自身が観て良かったと思える点を中心に書いてみたいと思います。


中国国境に近い北朝鮮・咸鏡南道の炭鉱で働くヨンス(チャ・インピョ)は元サッカー選手で

現役時代の活躍は人々の記憶にまだ残っているほどです。妻(ソ・ヨンファ)と11歳の息子

ジュン(シン・ミョンチョル)との生活は決して楽ではないものの、3人はお互いを尊重して

労わり合いながら、つつましくも幸せに暮らしていました。
戦前の日本の一般家庭よりも物が

少なく、貧しく質素な暮らしの中でも、家族が寄り添って助け合って精一杯生きている姿は、

清らかで私達が失ってしまった目に見えない大切なものを思い出させてくれるかのようです。


3人の食卓
3人の食卓


道具が無くてもボール1つあれば、あるいはボールすら無くても、代わりの物を見つけて

楽しめるサッカーが、世界で一番普及しているスポーツだと言うことは、この作品からも

良く伺えました。大人も子どもも、生き生きとサッカーを楽しむ様子は、暗くなりがちな

テーマに、やすらぎと光明を与えてくれます。貧しくて限られた状況でも逞しく生きる

人々に強い共感を覚え、憐憫の情だけにとどまらない何かを感じとることが出来ました。


炭鉱でのサッカーの試合
炭鉱でのサッカーの試合

サッカーを楽しむ父子と飼い犬
サッカーを楽しむ父子と飼い犬


ヨンスの友人で頻繁に中国を訪れる貿易商のサンチョルには、ジュンと同級生の娘ミソンがおり

ジュンは密かに恋心を寄せますが、ナイーブさが微笑ましく純粋さに心が洗われるようです。



制服姿のジュンとミソン
制服姿のジュンとミソン


こうして、テレビなどでよく観る平壌(ピョンヤン)以外の北朝鮮の様子を伝える手段として

現実に即しながらも優しい目線と絶妙なカメラワークにより、その先に待っている展開に一種

の期待感を抱かせ「決して目を伏せることなく最後まで鑑賞しよう」と言う気持が自然と沸いて

来るように工夫している点は、製作者の最も苦労したことのひとつではないかと思いました。


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5. クロッシング~祈りの大地~ ①

2008年6月26日、北朝鮮の悲惨な現状と脱北者の悲劇をリアルに描いた映画作品、

キム・テギュン監督の「クロッシング」が韓国で封切りされ好評を博したそうです。

翌年の2009年春には日本全国でも上映されると、一旦は公表されたようですが延期され、

ようやく今年2010年4月17日より、東京渋谷・ユーロスペースにて公開が始まり、

ここでの反応が良ければ全国でロードショーを予定しているとのことです。

私は、4月17日から渋谷・ユーロスペースで始まる上映に1人でも多くの方々に足を運んで

隣国で起きている現実を直視して理解を深めてもらい、興行が成功して全国でのロードショー

が実現されるようにとの願いを込めて、作品を紹介します。



印象派の絵画を彷彿させる北朝鮮・咸鏡南道の風景
印象派の絵画を彷彿させる北朝鮮・咸鏡南道の風景 
主人公のヨンス(チャ・インピョ)と息子のジュン(シン・ミョンチョル)


父子が再会を目指すモンゴルの美しい夜空
父子が再会を目指すモンゴルの美しい夜空


村でのささやかな娯楽の様子
村でのささやかな娯楽の様子


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4. 言葉の壁を越えられるか?

韓国映画「タイフーン」によって、人生のターニング・ポイントを勝手に自覚した私に、

最初に立ちはだかったのは、言葉の壁でした。


ピアノ超初心者の私が、ショパンノクターン13番をいきなり挑戦した時、楽譜を見て先ず

思ったことは「これを完璧にマスターするより韓国語の方が、ずっと簡単だろう…」でした。

ところが「文法は日本語と似ているし、漢字語が多いので日本人には1番簡単な外国語だとの

前評判もあるし」と、甘く考えたのがいけなかったのか、大苦戦を強いられることに…

日韓交流に言葉は不可欠、何が何でもマスターしなければと思いつつ、何度も挫折しました。

若い時分には考えられないほど物覚えが悪くなり、覚えた先から忘れる繰り返しを続けて、

もう嫌になり諦めかけた時、ふとしたことからある考えがよぎりました。

「完璧なマスターは程遠いにしても、ある程度気持ちよく弾けるようになったピアノ」と、

「やっても、やってもすぐ忘れて覚えられない韓国語」の違いは何だろうかと。


『ピアノは頭だけでなく、指が覚えている部分があるのに対して、韓国語は頭だけで

覚えようとしている。韓国語も指で覚えれば、出来るかもしれない!』


先ず、パソコンの設定を追加して韓国語入力を可能にし、キーボードにハングル文字の

シールを貼りました。シールはすぐ文字の印刷が消えてしまい、そのうちシールも剥がれる

ことに気付き、USBでパソコンに簡単に取り付けられるハングル専用キーボードを購入しました。

格安品でしたが非常に使い勝手が良く、ノートパソコンの手前にキーボードを置いて入力し、

日本語を入力する時は従来のキーボードを使用するようにしました。

毎日20分くらい文字入力に時間を費やし、2週間ほど続けると慣れて違和感無く打てる

ようになり、それをもう少し続けたら、簡単な単語は指が覚えた状態になり、速度が

少しずつ早まって、スムーズになって来ました。


1番良かったのは、ハングルキーボードによって、韓国語の勉強にメリハリが出来て楽しくなり、

気分転換にもなったことです。相変わらず覚えたことはすぐ忘れますが、100% のうち 99% を

忘れても、残りの 1% をコツコツと積み重ねてマスターしようとする気力が持続しており、

今度こそ、壁を越えようと意気込んでいるこの頃です。


セジョン&シン4
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3. 思いが形になる時

「日本と韓国が真の友好関係を結んで、南北統一の後押しをする」

この思いが一個人の、とても小さくてささやかな思いでも、何も願わないより、

願ったほうが良いことを私はよく知っています。

さまざまな立場の、さまざまな人々がおり、いかに困難なことであるかをわかっていても、

隣の国と仲良くすることが悪いことであるはずがなく、分断された同一民族の統一が

悪いことであるはずがないという真理に基づいて、思いが形になるように祈り続けます。


私は、特定の宗教を信仰しておらず、いかなる政治的・思想的団体にも所属して

おりませんので、ここに書くことは全て自分の経験と感性によるものです。

内容が時には特定の宗教の教えと変らないと思われるかもしれませんし、政治的な観点から

言えば 「右より」 の考えが多いと感じられるかもしれませんが、それはそれで仕方のないこと、

どんな風に受け取られるかは、読んでくださる方にお任せするしかありません。


ただ、私自身が 「自分は恵まれた人生を送って来たと感じる点」、そして自分では

わからないけれど 「運が良い」 「パワーがある」 「元気をもらった」 「超晴れ女」 等と

長年にわたって周囲から常々言われ続けていることなどから、何かしらのポジティブな

エネルギーを引き寄せていると考えることが出来ます。

自分で言うのは恥ずかしく、おこがましい気もするのですが微力でも、このポジティブな

エネルギーが、何らかの役に立てたら嬉しいことだと思って第一歩を踏み出しました。


セジョン&シン3
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